当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の扱いが 2023年5月に5類に移行したことにより、経済活動の正常化やインバウンド需要の回復、雇用・所得環境が改善し、設備投資に持ち直しの動きがみられるなど、景気は緩やかに回復いたしました。一方で地政学的リスクが長期化するなか、物価の高止まりや金融市場の変動、また、海外景気の下振れリスクなど、先行きは依然として不透明な状況が続いております。
情報サービス産業におきましては、経済産業省が公表する特定サービス産業動態統計によると受注ソフトウェアの売上高は、対前年同月比プラスで推移するなど、デジタルトランスフォーメ ーション(DX)※1への需要に加え、コスト削減やDR対策※2に向けたクラウド化などのニーズが牽引し堅調に拡大いたしました。
このような経営環境の下、当社グループは2024年3月期から始まる3か年計画『NEXT C4』を策定し、主力の受託開発事業(コアビジネス)の拡大及び、デジタル技術を核としたDX案件の積極的受注に取り組みました。しかしながら、一部の受注予定案件でスケジュールの延伸が発生し、 また、他案件への速やかな移行が難航いたしました。そのため、連結売上高は当初計画を下回り17,357百万円(前期比0.1%増)とほぼ横ばいとなりました。利益面では、社員の積極採用及び給与水準の引き上げ並びに情報化投資など体質強化に向けた先行投資を実施した一方、生産性の向上と売価の改善に取り組みましたが、補うことができず、営業利益は1,719百万円(同 6.2%減)、経常利益は1,730百万円(同6.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,184 百万円(同8.5%減)となりました。
当連結会計年度のサービス分野別売上高は、次のとおりであります。システムの企画/設計・開発フェーズで提供するシステム・ソリューションサービスは、金融向け案件の立ち上がりの遅れが発生した影響などにより、5,916百万円(前期比10.0%減)となりました。また、システムの稼働後に提供するシステム・メンテナンスサービスは、証券及び公共並びにDX関連の案件を中心に、ビジネス領域を拡大して継続受注に注力したことなどにより、11,441百万円(同6.4%増)となりました。
当連結会計年度の業種別売上高は、次のとおりであります。 銀行業界向けは 2,545百万円(前期比6.8%減)、証券業界向けは 1,145百万円(同68.7%増)、保険業界向けは 5,716百万円(同0.6%増)、クレジット業界向けは 2,138百万円(同18.2%減)、公共向けは 1,355百万円(同4.0%増)、流通業界向けは 1,266百万円(同0.6%減)、その他業界向けは 3,191百万円(同4.7%増)となりました。
また、配当政策につきましては、株主の皆様に安定的かつ適正な利益還元を継続していくことを基本方針としており、目安とする連結配当性向の水準を40%としております。この方針に基づき、1株当たりの配当金につきましては、21円50銭の中間配当を実施し、期末配当は、普通配当22円の配当案を第48期定時株主総会に付議することといたしました。これにより、1株当たりの年間配当金は、43円50銭となり連結配当性向は42.7%となります。
(※1)デジタルトランスフォーメーション(DX):
企業がIoT、AI、ビッグデータ等の先端デジタル技術を活用して新たな製品サービス、ビジネスモデルを創出すること。
(※2)DR対策:
「Disaster Recovery(ディザスタ リカバリ)」の頭文字を取った言葉。自然災害、通信障害、システム障害など、災害の発生時に迅速にシステムを復旧する対策のこと。
当社グループは、ソフトウェア技術・デジタル技術をお客様へ提供し、ベスト・パートナーとしてお客様とともに持続的未来の実現に向け成長することをビジョンとしております。そのために、デジタル技術を核とし、実装能力に裏打ちされた技術力を恒常的に提供できる企業を目指しております。 現在、当社グループは、「中期経営計画 NEXT C4」を策定し、次の基本戦略に取り組んでおります。
・ 主力の受託開発事業(コアビジネス)の拡大
・ デジタル技術を核とした、DX案件の積極的受注
・ 人的資本への投資を継続実施
・ 開発人員の増強
・ 更なる事業拡大に寄与する業務・資本提携やM&Aの遂行
以上の戦略実現に向けて、次の施策に注力してまいります。
- 主力の受託開発事業(コアビジネス)の拡大
これまで、テクノロジーの進展が顧客企業のサービスの多様化へ繋がり、その結果、システム化への投資は継続的に拡大してまいりました。
当社グループは、引き続き既存システムの継続受注やクラウド化やセキュリティ強化などに向けた更新・刷新需要への対応及びビジネス領域を拡大した新規プロジェクトの立ち上げに向けて注力してまいります。
特に、既存顧客との継続取引や新規顧客の開拓に向けては、新しいビジネスやサービスを顧客と協働しながら新たな価値を創造する、いわゆる顧客のベスト・パートナーとなる取り組みが重要であると認識しております。今後も業務力及び技術力の更なる向上を図り、積極的な提案営業活動に努めてまいります。 - デジタル技術を核とした、DX案件の積極的受注
業務プロセスの効率化やビジネスモデルの変革などビジネス上の課題を、デジタル技術を活用することで解決する取り組みが増えております。
当社グループは、DX案件を専門的に取り扱う部門を継続的に設置し、DX技術者の増員及びスキルアップに努め、全売上高に占めるDX案件売上高比率を高めてまいります。
なお、従来の生産性及び品質の向上に加えて、この様な高付加価値案件の売上高比率を高めることによ り、全社の収益性の向上に繋げてまいります。
また、当社は、世界的に注目されている生成AIを活用し、自社製品「ジシャナビ」をリリースいたしました。今後、生成AIを活用した業務の遂行やビジネス機会の拡大が見込まれるため、社内体制の整備や生成AI技術者の育成に取り組んでまいります。
- 人的資本への投資を継続実施
「価値創造-たえざる自己革新-」をコーポレート・スローガンにし、技術とヒューマンスキルを両輪とした人材育成に取り組んでおります。
プロジェクトリーダー(PL)の育成促進に向けて教育カリキュラムを整備するとともに、プロジェクトの中核を担う中堅システムエンジニア(SE)の育成を強化いたします。また、継続してeラーニングの必須講座による全社員のスキルの向上に努めてまいります。加えて、社会的課題の解決を目的としたソーシャルビジネスの創出に向けた人材の育成にもチャレンジしてまいります。
また、社内で実施した社員満足度調査を踏まえて、社員一人ひとりの能力を最大限に発揮でき、更なるモチベーションの向上と人材の育成促進を目指して、役割の明確化などを軸とした人事制度改革を推進してまいります。
以上、これらの取り組みにより、更に受注領域を拡大して高付加価値ソリューションを提供することを目指してまいります。